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俳優の児玉清氏はフランシスの大ファンで、知人に読めと盛んに薦めているらしい。著者は英国を代表する名ジョッキーで、その作品は全て競馬を舞台にしたミステリー、とくればおのずと作品世界には限界があるだろうとたかをくくっていた。 しかし代表作とされる本作を読んで唸った。冒頭から『幻の女』を思わせる名文である。そして競馬場という衆人環視のもとで起こる不可解な事件、いわば究極の密室ものといえるだろう。競馬等ギャンブルに疎い私でもわくわくするような設定なのだ。また、謎解きで辿る思考過程から一種の「理系ミステリー」といえるかもしれない。 謎を解き明かす探偵役も変わっている。馬に関してはプロ中のプロだが、探偵に関してはずぶの素人が危険な潜入捜査を敢行するのだ。その過程で主人公は英国の階層社会を垣間見る。厩務員といえば高度な専門職だが、馬主の貴族に比べれば使用人扱いだ。オージーの主人公は身分社会に憤慨しながらも依頼主の期待に応えようとする。 途中で様々な苦難や誤解に遭遇し肉体的精神的な屈辱を舐めるが、それだけにラストは爽快だ・・・と思いきや意外な方向へ。最後まで目を離せない作品だ。 ------------------------------------------------------------------------------ [あらすじ] オーストラリアで種馬牧場を経営するダニエル・ロークの元にオクトーバー伯爵という人物が訪ねてくる。英国貴族で障害レースの理事であるオクトーバーはダニエルに奇妙な依頼をする。 ここ数年、英国では障害レースで大穴が相次いでいた。勝った馬は明らかに興奮剤が与えられている症状を示すのだが、血液検査で異常が見つからない。馬には皮下注射や電気ショックの痕もなかった。また、それらのレースで勝ち続けた不審な個人もいなかった。 興奮剤の投与はどのような手口で行われているのか?どうやって検査をすり抜けたのか?不審なレースに共通するものは何か?しかし、以前オクトーバーに調査を依頼された私立探偵は不審な死を遂げていた。 そこでオクトーバーは馬を熟知し英国で顔を知られていないロークに潜入捜査を依頼する。ロークは英国に渡ると、厩務員に変装し危険な任務に就くことになる。 |
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