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zoom RSS 『相棒 -劇場版-』は微妙

<<   作成日時 : 2008/05/05 01:18   >>

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『相棒』はテレビ朝日系列で放送されているドラマシリーズだ。
水谷豊と寺脇康文が扮するはみだし刑事 - 特命係が手ごわい謎に挑戦する。
日本の刑事ドラマで大人の視聴に耐える数少ない番組の一つだ。

このドラマはジャニーズ系やグラビアアイドルをレギュラーメンバーに一切使わない。
したがって純粋な俳優だけで構成される配役は他の刑事ドラマに比べ地味である。
そこで、ドラマの出来は脚本と主人公二人のキャラクタ設定に頼っている。

テレビシリーズの脚本において大切にされてきたのが「犯人の動機」である。
すなわち「誰がなんのために?」

以上の特徴そのままに映画化されたのが 『相棒 -劇場版-』 だ。
本作はテレビ朝日開局50周年事業の一つでもある。

5月1日の公開初日に観たが、劇場は盛況であった。

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注) 以下には『相棒 -劇場版-』に関するネタバレがある。


話は5年前に遡る。南米の某国でボランティア活動中の日本人青年がゲリラに捕えられた。日本政府は交渉に応じず青年は公開で処刑されたが、この際に政府高官によってある機密事項が隠滅された。

5年前のこの事件で青年の「自己責任論」を煽ったテレビキャスター、コメンテーター、法律家が殺される。彼らはネットの処刑リストに載っていた。

青年の復讐に燃えているらしいこの犯人はさらに大きな無差別殺人を計画しているらしい。

そのことに唯一気づいたのが特命係の杉下で・・・というストーリーだ。

以下は勝手に述べる映画の感想である。


(内容について)

脚本は頑張って書かれているが、本来重要であるはずの犯人の動機に重大な欠陥がある。

冒頭の三人殺して晒す行為は人間一人の命の代償にしては大きすぎるし、(自分勝手ながら)正義を標榜する犯人の動機にそぐわないサイコ的行為だ。主犯はガン告知を受けたから思い切った行動に出たのだろうが、自らの余命にこだわるくせに他人の命を軽く奪いすぎる。

犯人像が不自然なことで、後半の「日本人への断罪」に説得力がない。

結局、犯人は杉下によって「あなたのやり方は間違っています」と一刀両断される。

私が予想していたのは実行犯が次第に暴走し手がつけられなくなったため、娘を使い自殺に見せかけて殺したというものだった。そうでなければ、マラソンレース終盤で娘が唐突に現われ実行犯の死に立ち会うことはないと思ったのだ。

また、青年の妹がなぜ死ぬ直前の被害者たちを次々訪ねたのかは説明されなかった。

犯人の動機について杉下は「5年前に彼を見捨てた人間全部が標的」と言う。実際、安否を気遣う家族に「日本の恥」、「死んで当然」という嫌がらせはアフガンにおける日本人人質事件でもあった。しかし、こうした嫌がらせをする手合いにそれほど罪はないのである。「愚かな大衆」は難病の子供が気の毒と聞けば、すぐ同情して募金活動を行ったりする。

問題にしなければいけないのは大衆を誘導した有名人・政治家の発言・マスコミの論調等だ。この点、マスコミの代表として「自己責任論」を煽ったニュースキャスターが殺される。映画内ではキャスター個人の責任に転化しているが、明らかに彼を起用したテレビ局の責任ではないか。

たとえば『報道ステーション』の古館伊知郎の発言で問題が起きたら番組プロデューサー、ひいてはテレビ朝日の責任だろう。しかし映画中で放送局そのものへの告発は最後まで出なかった。「醜い僕らは反省しよう」という自虐的な雰囲気の中で、これははっきりと後退している。

ここらあたりがテレビ朝日という放送局の作った映画の限界なのか?

「テレビではスポンサーの顔を立てなければいけないが映画ではやりたいようにやる」
とはいかなかったのだ。そうした意味で、この映画は完全にテレビの延長上といってよい。

結局、木村佳乃扮する代議士の鶴の一声で5年前の暗部が白日のもとに晒される。主人公たちは真実に届かなかったのに、父親の地盤を次いだ保守政治家によって救われるとは、無力感が募る話だ。

しかも、処分されたと思ったS-ファイルを探し出したのは西村雅彦演ずる一介の記者だ。

そんな重要なもの、彼はいったいどうやって手に入れたのか?

この事件最大のミステリーだろう。


(演出について)

細かいところでは、寺脇演じる亀山刑事が爆弾の扱いが雑だったり(振動感知爆弾だったらどうする?)、手紙を出した外国人の友人の行動が不自然だったりという不満がある。同じ内容の手紙を青年の遺族だけではなく(特に外国の)マスコミに漏らせば日本政府へのプレッシャーは相当なものになったろう。少なくとも家族もろとも国賊扱いされることはなかったはずだ。

後半はマラソンコースがクライマックスかと思いきや、その後も長々とドラマが続く。おかげで大勢のエキストラを使った撮影がもったいなく思えた。特に最終盤、取調室での独白と病室での手紙を読むシーンは内容がダブっており、悲壮な音楽と相まってしつこ過ぎる。テレビのようなCM抜きでこれらのシーンを延々見せられるのは辛い。

良かった点はTVレギュラー陣の刑事三人組や鑑識などが活躍すること。津川雅彦の江戸っ子代議士や木村佳乃のクールビューティぶりはよくこなれていた。テレビ版セミレギュラーの木村佳乃はあまり役に恵まれない女優だが、親子二代の政治家役は様になっている。故小渕首相の娘よりよっぽどそれらしい。ゲストで親子を演じる西田敏行と元仮屋ユイカも適役。

いくつかの点でフジテレビ系列の『踊る大捜査戦 映画版』よりましなのは確かだ。
リストラの腹いせに連続猟奇殺人を起こすというあちらのストーリーはあんまりと感じたからだ。

それに対し、本作の「S-ファイル」の内容には納得でき、しかも結構リアリティがあった。

『相棒 -劇場版-』 はテレビの2時間枠だったらさぞかし評価が高かっただろう。
しかしテレビ版の出来が良い分、こちらはそれ以上の期待をしてしまう。

劇場で金を払うなら「映画の日」の \1000 がリーズナブルか?

それを裏付けるように、5月3日放送の『相棒 〜コンビ誕生編』はかなり面白かった。

ところで街をチェス盤に見立てるという発想は面白いが、この作品が初めてではない。

C.ランバート主演の『美しき獲物』はチェスそのものを扱ったミステリーでかなり面白い。


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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
 テレビ番組の方は、殆ど全部見ています。
 劇場版はこれからです。

 先日のテレビで、ファザーコンプレックスの女子大学院生が、毒草から抽出した毒薬で、父親と父親似の男性を殺す役の女優さんに良く似た女性が家の近くにいることを思い出したのですが、テレビを見終わって、急にご近所で買い物をしたくなって出掛けから、そこで、件の女性に数年ぶりに出会いました。
 これは、いわゆる「意味のある偶然の一致」という奴です。
 この仕組みの説明は、次のブログ。
 http://blog.goo.ne.jp/i-will-get-you/
 一般法則論
 
一般法則論者
2008/05/18 15:16

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