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『黄金の灰』にも見られるように、古代ギリシャが柳作品の重要なモチーフになっている。作者は若いころにギリシャを放浪して影響を受け、特にアテネではその長い歴史に比して緑の少なさと強烈な陽射しにやられたという。 古代哲学者を生んだこの国にかつての栄光など望むべくもないが、今でも街のそこら中で市民があれこれ議論しているそうだ。それも抽象的な話題で盛り上がるらしい。この作品の最後にも『黄金の灰』のような抽象的な議論が登場する。 『パルテノン - アクロポリスを巡る三つの物語』は三つの独立したエピソードからなる。 『巫女』はペルシャ戦争に影響を与えたデルフォイの神託を下す巫女の真の姿を描くものだ。 神と交感し予言能力を持つ巫女といっても決して聖人などではない。 大衆や治世者の心理を操り大金をせしめるしたたかさだ。 それには情報収集と言葉の選び方こそが決め手だった。 「神々は曖昧な嘘をつく」というように、どうとでも解釈できる言葉が重要だったのだ。 現代の血液型占いと同じ様なものだ。 TVで同様な手法を用いて「相談者」を翻弄する占いおばさんを観るたびに、2500年経っても大して進歩のない人間にため息をつきたくなる。 それとも文中でいう「全てはギリシャに追いつこうとする」のだろうか? ------------------------------------------------------------------------------ [あらすじ] 圧倒的な兵力を誇るペルシャ軍をサラミスの海戦で破ったアテナイの英雄テミストクレスが一般市民に訴えられるという珍事が起きる、訴えたのは一人の小市民だが、アテナイの法に基づきテミストクレスは民会裁判にかけられることになる。サラミスの海戦におけるテミストクレスの行動から彼がアテナイ市民を侮辱するような人物か決定しようというのだ。 初めに証言台に立った若者エウメネスは「戦場におけるテミストクレスは全知全能のゼウスのごときであった」と賞賛する。 二番目のアリスティデスはかつてテミストクレスに職に追われた政治家だった。アリスティデスはテミストクレスの英雄的行為がギリシャを救ったことを認める。しかし、その犠牲として、テミストクレスが賄賂を受け取ったこと、一部のギリシャ人をペルシャに売り渡していたことをほのめかす。 最後に証言台に立ったのはシキンノスという野卑な老人だった。長年テミストクレスに仕えてきたというシキンノスはテミストクレスが伝統的なギリシャの神々を軽視してきたことやペルシャに通じてきたことを証言する。 法廷が騒然となる中、当初の審議目的である市民への侮蔑など、どうでもよくなっていた。 やがて一同は訴えられた当人のテミストクレスが出廷していないことに気づく。 |
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