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zoom RSS 岸田るり子の最新作 『Fの悲劇』

<<   作成日時 : 2010/11/07 01:06   >>

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岸田るり子 は鮎川哲也賞受賞のデビュー作『密室の鎮魂歌』以来、不可能性を追求する作品を発表し続けている。寡作だが、平均値は高く、その世界には一貫性がある。その岸田の最新作が『Fの悲劇』だ。

物語は主人公のさくらが空想の中で描いた家を見つけるところから始まる。さくらには少女時代から一回見たものを記憶する能力があったが、京都にあるその家を訪ねた記憶はなかった。しかし、下宿屋であるその家では、さくらの叔母でかつて人気女優だったゆう子が奇怪な死を遂げていたのだった。

ここで、話は20年前に遡る。女優の桐岡葉子こと、ゆう子は芸能界から姿をくらまし、京都の下宿屋に現れる。そこには高校の同級生で唯一心を開いた芳雄が働いていた。しかし憔悴したゆう子は何者かに追われているようで、下宿屋は奇妙な緊張に包まれていく。

このように現在(小説中では 2008年)と過去(1988年)が交互に描かれ、主人公も若い女性二人(さくらとゆう子)といってよい。特に何をやっても要領の悪いさくらが、叔母ゆう子の人生を追う過程で自らの人生を振り返るという構成は実にうまく描かれる。

さくらが不器用な理由なども最後にきちんと説明されたりするのが、実に“理系”ぽい。ただし、瞬間記憶というあまり一般になじみのない能力を持ってきたのは、どうかとも思う。山下清画伯が同じ能力を持っていたが、サヴァンと呼ばれる一種かなり例外的な人たちだからだ。

本作では、さくらをもっと普通の娘に描いても充分成立する物語と感じる。
同じくコンプレックスのある女性を描いた 『めぐり会い』 はその点がうまかった。

また、密室の扱いや殺人犯がどうでもよい感じで、少々減点。

ストーリーはかなり暗い面もあるのだが、さくらをはじめとする現在を生きる面々が下宿を舞台に推理を披露するシーンは「探偵クラブ」と化し、結構ほのぼのとしている。

岸田はこうした脇役の個性を描くのがうまい。ファンクラブ によると、クリスティやブランドなど黄金期の女性作家が好きだそうなので、確実に影響を受けているだろう。

例によって、最後は大いなる救いがおとずれ、大団円だ。

『天使の眠り』が岸田の最高傑作という私の意見は変わらないが、本作もかなり楽しませてくれた。


Fの悲劇
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岸田るり子


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