観たい・聴きたい・読みたい

アクセスカウンタ

zoom RSS ミステリーを文学に昇華 『白い逃亡者』

<<   作成日時 : 2011/08/29 00:12   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

ヨハネス=マリオ・ジンメル (Johannes Mario Simmel) はオーストリアの作家である。
日本では『白い国籍のスパイ』という小説のみで知られているといってよいだろう。

私もこの『スパイ』でしか知らなかったが、最近出会った意外な掘り出し物が『白い逃亡者』だ。

二番煎じ丸出しの日本語タイトルだが、原題はドイツ語で <Ich gestehe alles>(私は告白する)という。

Amazon で検索に引っかからないのだが、祥伝社から新書版で出ていた。

この小説の主人公はチャンドラーという名のアメリカ人シナリオライターだ。
彼がここ一年間に犯した犯罪と逃亡記を語るという構成になっている。

なぜ彼は犯罪を犯したのか?

不治の病に冒されたという(小説的には)陳腐な理由からだ。

彼を追い込むハリウッドの内幕、本当の病名を知るために行うはったり作戦など、前半は俗っぽい展開だ。

しかし、ヨランテ、モールドシュタインら登場人物たちの個性が通俗小説に落下するのを踏み止める。

その後、“逃亡者”となったチャンドラーが清純な乙女ヴィルマらと出会い、殺人者となる展開。

ここも、ありがちな気がするが、チャンドラーの内面の苦悩が描かれる。

その後、フロイント博士の登場と彼がもたらす真実に打ちのめされるチャンドラー。
(フロイント博士の存在感は、『指輪物語』のガンダルフを思わす)

ここで終わっても小説としては成り立つのだが、この先の展開はまるで別な小説のようだ。

ケストナーの『飛ぶ教室』を思わせる若者の教育を巡る話になるのだ。

ヒトは苦悩の後にいかにして人間に至るか? というヨーロッパ人の古典的な問いへの答えのようだ。

この点では、ゲーテの『ウェルテル』などとも共通点がある気がする。

この小説が出版されたのは 1960年(小説の舞台は1951年)。
まさに東西冷戦の真っ最中だ。

経済的にはアメリカが一人勝ちになっていく過程で、喪失感に苛まれたアメリカ人も多かった。

主人公チャンドラーもそうした人間の一人だ。

チャンドラーが平穏な死を迎える瞬間までを描くことにより、作者は「富ではなく豊かな精神こそが人間の根源的充足感をもたらす」と言いたかったのだろうか。

文学の香り豊かなミステリーというより、ミステリーを素材にしたドイツロマン派(風)小説なのだ。

案外、夏休みの読書感想文を書くには、こんな小説が良いのかもと思わせる。

手に入りにくいのが、致命的な難点だが。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ミステリーを文学に昇華 『白い逃亡者』 観たい・聴きたい・読みたい/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる