観たい・聴きたい・読みたい

アクセスカウンタ

zoom RSS 「写楽」の新たな可能性

<<   作成日時 : 2012/02/05 00:22   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

昨年 NHKの特集を観て 「佐賀藩の能役者 斉藤十郎兵衛説」 で決まりかと思いきや、世の中いろいろな考えがあるものだ。

作家の 島田荘司 が新たな写楽像を提示したのが 『写楽 閉じた国の幻』 である。


写楽 閉じた国の幻
新潮社
島田 荘司


Amazonアソシエイト by 写楽 閉じた国の幻 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



この「島田版 写楽」が成立するには、ある歴史的な条件が必要だ。
島田らの調査でその条件が成立したため、本作が発表されることになった。

ミステリー小説の形をとっているが、ある意味「論文」でもあるのだ。

写楽が短時間の創作時間で江戸から姿を消したこと。
当時の江戸で活躍していた歌麿や蔦谷重三郎が写楽の正体について一切口を閉ざしていること。

本作の島田説が以上を説明できる点は評価できる。

これは『切り裂きジャック・百年の孤独』でジャックの犯行が短期間でピタリと終ったこと、内臓を引き出されていたことを説明したのに似ている。


切り裂きジャック・百年の孤独 (文春文庫)
文藝春秋
島田 荘司


Amazonアソシエイト by 切り裂きジャック・百年の孤独 (文春文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



『写楽 閉じた国の幻』 では、写楽に描かれた役者が表情があまりにリアルで、かつ歌舞伎に文化的先入観が無い(美男美女に描かない)ことなどから、写楽を特定していく。

この「写楽の正体」を唱えたのは島田が最初ではないそうだ。

しかし、実在の人物の名前まで特定したのは本書が初めてらしい。

「社会派」 松本清張の路線といえなくもないが、その主張が島田節で表現されるのは相変わらずだ。

ただ、島田説の前提となっている「表情や服装のリアルさから判断して、写楽は実際に当時の歌舞伎公演を観て描いたとしか思えない」というのは必要なのか?

彫師や刷り師が関わる浮世絵では、役者の服装は後から付け加えられた可能性もあるだろう。

もっとも、実際に歌舞伎を観ずに写楽が描いたことを認めると、この小説は成立しないことになってしまうのも確か。

また、近年 「写楽の肉筆画」も確認されているが、分析材料として言及は無い。

さて、写楽探しとしては興味深い本作だが、小説としての完成度は若干??

「斉藤十郎兵衛説」の否定はかなり強引な感じ

冒頭に主人公 佐藤が子供を亡くすシーンは、その後の写楽探索とあまり関係ない。

美貌の東大教授 片桐も活躍はするが、佐藤の家族同様に存在が中途半端なままで終わる。

島田本人に言わせると、連載していくうちに内容が膨らみ、登場人物を最後まで描く余地がなくなったらしい。

単行本のページ数が増え価格が上がるので止めたそうで、ここらが週刊誌(新潮)の連載小説の限界だろうか?

一方で蔦谷重三郎を中心とする江戸時代のシーンは、断然生き生きしている。

特に芝居見物のシーンは独立して読んでも面白いが、蔦谷の「写楽作戦」は、はたして実行可能なのだろうか?

真実はどうであれ、そうであって欲しいと願ってしまうのが読者というものだ。

「写楽の正体」とは、作者が以前から提唱してきた「本格ミステリーの持つべき幻想的な謎」の一つの形でもあろう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「写楽」の新たな可能性 観たい・聴きたい・読みたい/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる