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zoom RSS 終戦の日にクリスティの「戦争小説」など

<<   作成日時 : 2014/08/15 00:05   >>

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クリスティ作品に「戦争小説」などあるのか? という声も聞かれそうだ。

例えば 『杉の棺』には、クリスティが軍関係に勤めていた際の知識が使われている。


杉の柩 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
アガサ・クリスティー


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これが難しいトリックで見破るのがほとんど困難。

ただしトリックだけが主眼でなく、内容はメロドラマ的要素を含むのが作者らしい。


直接戦争が出てくるわけではないが、ポアロ最後の作品 『カーテン』は、一種の戦争を描いた小説といえる。


カーテン(クリスティー文庫)
早川書房
アガサ・クリスティー


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戦争を背景にした時代に書かれたからか、全体に暗く、ヘイスティングスとポアロの会話も弾まない。

なによりポアロにとっては人生最後の事件である。

クリスティ作品には珍しいサイコ殺人鬼との死闘であり、ポアロは自らの命と引き換えに倒すのだ。


戦争が直接絡む作品としては 『満潮に乗って (Taken at the flood) 』がある。


満潮に乗って (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
アガサ・クリスティー


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ロンドンへの爆撃で夫を亡くし莫大な財産を相続した若き未亡人。

亡き夫の親族たちは「彼女さえいなくなれば…」と思っている。

彼らの心情が「戦争の引き起こした精神の殺伐さ」として表現される。

だからといって、簡単に殺人は起こらないのがクリスティ流。

そこまでに至る各登場人物の描き方が、名人芸なのだ。

さらに本作は、意外な被害者・意外な犯人の登場するクリスティ屈指の作品ではないか。

犯人はかなり凶悪で、ポアロも「こいつだけは縛り首にしなければ気が済まない」とまで言う。

ただし、『カーテン』と異なり、登場人物の会話は牧歌的で、最後も明るく終わるのが対照的だ。

『満潮に乗って』 は 『殺人は容易だ』 に並ぶ隠れた名作と思っている。


なお、似たような雰囲気のものに 『死者のあやまち (Dead Man's Folly)』がある。


死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
アガサ クリスティー


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こちらは、逆に牧歌的に始まり、最後に陰惨な真実を告げられる。

犯人像も『満潮に乗って』なみに意外だ。

両者の共通点は事件が起こる前から主人公としてポアロが登場し、連続殺人をようやく最後に解決するところだ。


犯人当てで異色作なのは 『葬儀を終えて』。


葬儀を終えて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
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アガサ・クリスティー


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クリスティ流の犯罪心理分析に従って消去法で犯人を予想していくと、容疑者が一人もいなくなってしまう。

心理戦に見えたストーリーが実は周到に計画されたトリックに基づいているのだ。

殺害方法が伏線になっているが、最後まで気づかなかった。

意外な展開に驚愕した作家の折原一は、この作品をクリスティのベストワンに挙げている。


私が最後に読んだクリスティの長編ミステリーが 『忘られぬ死 (Sparkling Cyanide)』。


忘られぬ死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
アガサ・クリスティー


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極めて少数の人物を長いページをかけて描き分ける。

犯人はこの中にいるのか?そもそも殺人は行われたのか?

読んでいるうちに不安がつのるのは、『殺人は容易だ』と同様。

しかも、他の作品に勝るとも劣らぬ内容だ。

文芸評論家 結城信孝は本作品をクリスティのナンバーワンであるとし、何度読み返してもそれは変わらないという。

たしかに、ガーンとくるトリックの『葬儀を終えて』より叙述が巧みであり、後で読み返すと舌を巻いてしまう。

毎回同じようなことを書いているが、そうした技術ではこの作品がナンバーワンかもしれない。


本格ミステリーをメロドラマと融合したことがクリスティの最大の功績ではないだろうか?

『ドーバー海峡殺人事件』として映画化された『無実はさいなむ (Ordeal by Innocence)』もその系統の傑作。

(映画は駄作!)


無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
アガサ クリスティー


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どんなに意外なトリックも小説書きとしての確かな技巧あってこそ輝く。

それを思い知らせてくれるのがクリスティ。

その後に続くすべてのミステリー作家に当てはまることだ。

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