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zoom RSS 映画『砂の器』は、豪華な2時間ドラマだった

<<   作成日時 : 2014/11/15 00:43   >>

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『砂の器』は、日本映画史上に残る名作と言われている。

午前10時の映画祭 で上映していたので、ほぼ20年ぶりに大スクリーンで観た。

その結果、それほど感動しなかったのが意外だった。


<以下の記事にはネタバレが含まれている>




原作小説からかなり改変されている点は、作者公認の映画だからこの際よいだろう。

松本清張によって原作が書かれたのは 1960年代前半。


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当時ハンセン病の治療は確立し、患者の社会復帰は続いていた。

さらに、回想シーンにも出てくる「日本政府による差別(隔離・断種)」への追及も起きていた。

しかし、1974年制作のこの映画には「一流国家では恥ずべきもの」と患者を遠ざけてきた国家への追求はない。

この映画だけを観た人は、作者を社会派とはまるで思わないだろう。

描かれる日本人は無知でいじめ好きな集団。

三木巡査(緒形拳、熱演)だけはお人好しの好人物で、それが災いし殺されてしまう。

わりの合わない話だが、日本全体が差別集団のように描かれた中で、唯一良い人が死ぬ不条理。

しかし、本来犯人に向かうはずの怒りの矛先はどこへ向けるべきなのか?

この映画には答がないのだが、迫害されながら旅する親子の哀れさとお涙ちょうだいでそうした疑問を許さない。

ラフマニノフ風の音楽『宿命』の力もあいまって、特に古い日本人の涙腺を刺激しただろう。

その音楽は立派なものの、原作のような前衛性はなく、あくまで映画音楽の範疇である。

いわゆるポピュラークラシックで「佐村河内風」ともいえる。


最後に言いわけがましく流れるテロップ「..親子の宿命は..」に子供の頃から違和感を感じていた。

売れる映画を作ろうとスターを揃え作ったものの、制作者は作品に社会性の不足を感じたのではなかろうか?

そうした批判を避けるために、ハンセン病患者擁護と親子の情を強調したのかも知れない。

日本の風土を捉えたカメラワークは何度観ても見事だが、ほとんどがお涙ちょうだいの道具となっている。

映画の感想では「これを観て泣かないのは日本人じゃない」という一方的なものもある。

ただ、そのお涙シーンも大人から見た少年(黙役)がそう見えていたというだけ。

「引き離されても親子の絆は固かった」とは、差別を許し迫害した大人の言いわけではないか。

成長した秀夫(和賀)は、絆どころか、自分の人生を巻き込んだ父親を憎んだかも知れない。

実際、和賀(加藤剛、若い!)は政治家の娘と婚約しながら愛人を妊娠させ命を奪う冷血漢になってしまった。

今西刑事が言う「今彼は音楽を通して父親に会っている」どころか、最後まで絶対会いたくなかったのである。

父との「巡礼」など思い出したくもなかったはずだ。

彼が知能犯ならどうするか?

療養所に入れられた父親に(居場所を知らせず)連絡を取り安心させ、それ以上追求させないのではなかろうか。

もしくは、三木に「元気でやっています」と知らせる手もあった。

父親と縁を切るため何も手を打たず数十年過ごし、いきなり現れた三木を殺すという和賀の行動に違和感が残る。

知的に見えながら、何だかよく分からない不気味なキャラクタ設定が、この映画の弱点の一つである。

しかし、どれもこれもドラマの早い流れと見事なカメラで(観ている間は)考えさせる余裕を与えない。


橋本忍・山田洋次(!)による脚本はかなり手際が良く、映画自体に退屈しない。

ただ、2時間半に詰め込んだせいか、とにかく調子がよい。

丹波哲郎演じる今西(知的でユーモアもある名刑事)の単独捜査によって、ぽんぽんと謎が解明する。

血を浴びたシャツを電車からばらまくのを新聞記者が目撃しエッセイを書くが、読んだ刑事とたまたま知り合いだ。

しかも、記者は布をばらまいたホステス(若き日の島田陽子、綺麗!)とたまたま会う。

それを聞いた刑事が勤務先のクラブを訪ねるとそこに犯人が現れ。。といった具合。

苦労して拾った布きれに付着した血液型が一致しただけで容疑者扱いは無理だろう。

(DNA鑑定はない時代)

そもそも、血染めのシャツを目立つように電車の窓からまくか?

切り刻んで燃えるゴミに分けて出せば解決では?

今西が大阪の区役所を訪れると、お役人は戸籍謄本を次々見せ捜査に協力。

しかもプライバシーや人権など無視で窓口で大声で応対するのだから、中世並みの人権意識だ。

その後、商店会長の証言で和賀が自転車屋の息子になりすましたことがあっという間に判明する。

(TVの十津川警部ですら、もっと苦労しているはず。。)

そんなに簡単に身元がばれるなら、有名人になった時点で誰かが調べて指摘する気がする。

(今なら Wikipedia 書く材料にとして)

あるいは、偽造した戸籍の珍しい名字「和賀」で創作活動しないのでは?

。。。とまあ、考え出すときりがない。


キャストに関して、当時のアイドル俳優 森田健作の大根ぶりはかわいそうなほど。

寅さん 渥美清の友情出演も山田洋次つながりだろうが、場内で一瞬失笑が起きた。

キャスティングに関わる政治関係はよく分からないが、昨今のジャニタレドラマばかりを批判できないだろう。

むしろ、国語研究所や科警研の研究者を演じる名もなき俳優にリアルさを感じる。


結論だが、私にとって『砂の器』は、真の社会派作品でも感動作でもなかった。

それでも、いろいろな楽しみ方ができるのは制作者の努力のおかげである。

これは、超豪華キャストと制作に時間をかけた2時間ドラマと思えばいいのだ。

1960年代に制作されたハリウッド大作『ベン・ハー』 『十戒』がイスラエルのプロパガンダ作品にしかみえない昨今。

他の日本映画を観てどう感じるだろうか?

かつて衝撃を受けた『羅生門』や『切腹』には裏切られないと信じたい。


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