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zoom RSS がんばった 映画『天空の蜂』

<<   作成日時 : 2015/10/06 23:42   >>

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最近乱造が目立つ作家 東野圭吾の自他共に認める代表作といえば『天空の蜂』だろう。


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同じく 『白夜行』 も映画化され悪くなかったが、内容の暗さであまり評判にならなかった。

『天空の蜂』は社会性と娯楽性を併せ持つ作品だが、私は ブログ で「映像化不可能」と書いた。

しかし時代は変わり、東日本震災と福島事故、電力政策などの要素が絡み、ここに映画化された。

映画『天空の蜂』 は、商業主義の業界にあって映画人の意地も見せつける力作である。


以下に映画『天空の蜂』のネタバレがある。


良い部分から述べると、可能な限り原作に忠実に映像化しており、理工要素もうまく説明・処理されている。

発電所の上にホバリングする巨大ヘリ ビッグB は、単に爆薬を搭載する凶器だけではない。

発電所全体を監視するモニタでもある、という設定は秀逸だ。

発電所を停止させたと嘘をついても、冷却水の温度差からばれるというのは本当である。

軍事衛星が世界中で他国を監視するのに使われている。

一方「こうまでして発電所に落としたかったとは狂っている」と叫ぶセリフがある。

原作によれば、ヘリが落下直前にローターの根元を爆破し切り離し機体の空気抵抗を減少させる意味であろう。

しかし、おそらく観ている人に意味は分からないので、もう少しクリアに説明する余地があっただろう。


原作もそうだが、登場人物はうまく整理されている。

演技者にお笑い芸人や○○48系列のアイドルは出てこない。

原子力技術者だから、自衛隊だから、という画一的な描き方は避けている。

したがって、発電所技術者、レスキュー隊員などが良い仕事をしているように見え共感を覚える。


この映画のウリは従来タブーだった原子力産業や政策、さらにそれを招いた日本国民への批判があることらしい。

たしかに、そうした傾向は随所に見られる。

ただし、多くのセリフは言いっぱなしであり、制作者に建設的な意見があるわけではない。

「日本人は電力を使っても、見たくないもの(下層原発労働者)は見ようとしない」

「都会人は電気で享楽的な生活をしながら発電所は地方に押しつける」

といったセリフが登場人物から投げつけられるが、心情は分かるものの少し乱暴ではないか。

下層への軽視はむしろ階級社会(+植民地政策)が長く続いたヨーロッパで顕著な傾向であった。

これは、現在の移民流入問題などにつながっている。

また、原子力発電所は大量の冷却水(海水)を必要とする。

そのため、取水に不利な遠浅の海を避けて建設される(北陸・三陸などが選ばれている理由)。

結果的に人口の多い都会から離れているわけである。

「原発が安全ならを都会近くに建ててみろ」というのは、いわゆる「反対派」の乱暴な議論すり替えなのだ。

加えて、発電所の誘致により、地元自治体は 電気事業法 のもとに莫大な交付金を得ている。

つい最近も四国の自治体の議会が満場一致で 再稼働 を支持した。

都会人のニーズを利用して地方も交付金と享楽的な施設をせしめてきたのだ。


「犯人の要求に応じ原子力発電所が日本で停止するなどあってはならない」という原子力業界人のセリフがある。

この言葉は、この映画で(逆の意味で)最も重い。

なぜなら、日本は2011年の震災以後まったく原子力発電に頼らずに暑い夏を切り抜けた。

つまり、「あってはならない」ことも現実にあり得ることが証明されたのだ。

日本って原子力無くてもいけるんじゃないの? と。

(二酸化炭素や温暖化云々はともかく)

それでも、原子力に頼るか? を分かりやすく突きつけるのがこの映画である。

モデルで女優の杏が「観終わって映画館から出ると議論したくなる映画」と言うのも頷ける。


冷静に考えると、この映画には気になる点が多々ある。

<売り方の問題>

ポスターのコピー「絶対守り抜く」はあまりにクサく、江口の演技ともどもフジテレビ臭がする。

予告編を観れば真犯人が分かる(原作を読んでいない人は注意)。


<演出上の問題>

終盤はスローモーションの多用で一本調子。

江口演じる主人公の家庭問題が必ずしも必要ではなく、内容に集中できない。

「このばけものー」 「とどけー」 などいい大人が大声でわめき過ぎで幼児ぽい。

ラストに流れる音楽が内容の重さにマッチしていない。


<内容の問題>

これだけのことをする犯人の動機が充分説明できていない。

自衛隊員となり2011年の震災で人命救助に従事する息子のその後が描かれるが、東電事故の惨状に触れない。

原子力発電所の是非をめぐる前半に比べてこれは不自然ではないか?


とまあいろいろ出てくるが、観ている間は考える余裕を与えないジェットコースターぶり。

このような映画は、あまり日本で作られたことがないはず。

出演できた俳優は運が良かったとあとで思い返すだろう


この映画の舞台 1995年の阪神・淡路震災時は社会党連立の村山政権、東日本震災時は民主党の管政権だった。

原子力政策を進めたのは一党独裁時代の自民党だ。

しかし東電福島の事故時に野党だったおかげで運良く批判を逃れ、間もなく政権に返り咲いた。

恐るべき悪運の強さだが、その後も選挙にろくに行かず流される日本人はある意味すごいのではないだろうか?


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