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zoom RSS 新年の快作 『ミス・シェパードをお手本に』

<<   作成日時 : 2017/01/03 14:27   >>

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皆テレビがあまりにくだらないと悟ったか、正月の映画館は大繁盛だ。

忘れがちだが、元旦は毎月一日の「映画の日」でもある。


あいにくと今年は正月映画もいまいちだが、困ったときの シネリーブル である。

なんとなく目について観た映画が 『ミス・シェパードをお手本に (The Lady In The Van)』

これはみごとな快作だった。

日本語の予告編も最近のものの中ではかなりましな部類だが、邦題には違和感を感じる。

直訳して 『ヴァンの淑女』 でよかったのでは?


内容は英国の高名な劇作家 アラン・ベネット の体験談だそうだが、「現実は小説より奇なり」を地でいく。

庭先のワゴンに住み着いた老婦人との15年間(!)の交流を描くが、ただのしみじみとしたヒューマンドラマとは違う。

自称ミス・シェパードという老婦人というか小汚いばあさんが異常に図々しいのである。

図々しい老人なら多くの映画でも描かれてきたが、排泄物ネタ含めその行動は現代なら異常者扱いでは?


名女優、 マギー・スミス もよく引き受けたと思うが、そこは演劇の国イギリス。

綺麗なだけが名優の条件とは思っていないのであろう。

過去の美貌や栄光にしがみつく日本の老優たちにも見習って頂きたい。


もちろん汚いシーンばかりではなく、回想シーンやピアノを前にしての表情には品格が漂っている。


脇役も良い。

近所の人が詮索好きな反面妙に親切なのに驚くが、「富裕な知識階級の後ろめたさ」と劇中で分析している。

実在の アルフレッド・コルトー や近所に住む ヴォーン=ウィリアムズ (夫人)も出てくる。


回想のコンサートシーンでは、きちんと弾ける少女ピアニストとオーケストラを使っている。

ここぞとばかり売り出し中の子役タレントを使う日本とは大違いだ。


一方で映画の舞台は、(ベネットが実際暮らした)庭先が中心でロケに金がかかっていない。

そこで脚本と演出が大事になるのだが、個々のセリフだけでなく構成に工夫がある。


映画の語り手で分析者であるベネットは、いいネタが入ったとミス・シェパードを小説に描く。

一方で、実際彼女の世話を焼くもう一人のベネットが登場する。

二人が葛藤しながら描写するため、ミス・シェパードの多くが劇中劇のように描かれる。

このため、少し「盛っている感じ」(ラストシーンなど)のわざとらしさは消えており、同時に悲劇性も薄れている。

宗教的不寛容や戦争に翻弄された「女の一生」を描いているのだから、実際は相当に深刻な話しなのである。

移民問題やトランプ当選など現代に通じ、また原題中の 'Van' はもともとジプシーの乗る幌馬車の意味だそうだ。.


ベネットの原作・脚本、またこの作品の制作陣は知的な作業をしたと思われる。


この映画はどんな世代の誰が観てもなにかを感じられるだろう。

映画のアイディアが枯渇した映画人や寛容の心が不足している昨今の日本人には特にお勧めできる。

エンターテイメントとヒューマンドラマを大金をかけずに両立したみごとな作品だ。






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