お奨めミステリー小説 (165) 『蝿の王』 W.ゴールディング

作者の出身地コーンウォールという土地はイギリスにあってもアングロサクソンよりケルト的な香りが強い土地であるという。古代ローマにとって、ケルト民族は長らく「野蛮で未開な連中」であった。

ケルト人(ガリア人)に対する恐怖はローマに数多くの要塞都市を建設させた。
現在のパリやロンドンもその名残りだ。

人間の根源に潜む暴力性に眼を向けた作品は数多い。
しかし、登場人物が子供だけということがこの作品を特異に見せている。

生きるために必要となったら、「軍人」ジャックに付くか、それとも「理想主義者」ラーフを選ぶか?

これは人として究極の選択だろう。

象徴的な「蝿の王」の登場によって、本作はホラー要素を帯びてくる。
映画化された際も、この視覚的印象は強烈で、夢にまで出てきたことを思い出す。

そして中盤から終盤にかけて、文明人こそが最も残酷だということを教えてくれる。とにかく怖い物語である。
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[あらすじ]

核戦争の中、イギリス人を乗せて飛んでいた飛行機が撃墜された。
生き残ったのは少年たちだけで、漂着した無人島で共同生活を送ることになる。

まず全員呼びを集めたラーフが隊長に選ばれ、ジャックが狩猟隊の隊長になる。

当初は合議制でルールを作っていた少年たちだが、ラーフに対抗意識を持つジャックが暴走し始める。
ジャックと周りの少年たちは野ブタ狩りを通して野生に目覚め、その声は血に飢えた獣のようになっていく。

彼らはまた野生動物や自然の力に怖れを抱くようにもなる。

中立的な立場のサイモンは森に行き、ジャックが森の神に捧げものに置いたブタの頭を見かける。
腐りかけハエが群がるブタの頭は自分を「蝿の王」と名乗る。

そしてまるで暗黒の主であるかのように薄笑いを浮かべなが、らサイモンに語りかけるのだった。


蠅の王 (新潮文庫)
新潮社
ウィリアム・ゴールディング


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