お奨めミステリー小説 (272) 『ダナエ』 藤原伊織

旅行代理店に勤めていたという作者の描く登場人物には業界人が多い。
ちゃらちゃらしているようで、どこか生真面目な人物が活躍する。

本作も例外ではない。嫌なやつばかり出てくると思ったら、実はそうでもなかった。
最後はほのぼのした人情もので“ちょっといい話”になっている。

ギリシャ神話の登場人物であるダナエはゼウスとの間にペルセウスをもうけた。ペルセウスは婚約者アンドロメダを救うため怪物メデューサを退治する。アンドロメダの母親はカシオペアなどとともに星座の名前となっている。

ギリシャ神話には人間くさい神々が多数登場するので、ミステリーの宝庫だ。『オイディプス症候群』など神話にインスピレーションを得て書かれているが、『オイディプス王』 自体もアリバイ、犯人捜しなど世界最初のミステリー作品といえるかもしれない。
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[あらすじ]

売り出し中の画家、宇佐美の個展で作品に硫酸がかけられるという事件が起きた。傷つけられたのは宇佐美の義父で財界の大物である古川宗三郎を描いた肖像画だった。その後、宇佐美に犯人と思われる少女から電話がかかってくる。少女は「これは予行演習に過ぎない」と予告する。宇佐美は絵のモデルである古川が実際に狙われるのではないかと心配する。

宇佐美と妻の中は冷え切っている。妻の父親である古川は宇佐美に理解を示すが、車で移動するようにとの宇佐美の忠告を無視する。仕事はともかく趣味である句会には電車を乗り継いでいくと言い張るのだ。

一方で展覧会の受付をしていた庄野という女性が宇佐美に興味深い話をする。かつてエルミタージュ美術館で起きたレンブラントの『ダナエ』が事件に酷似しているというのだ。少女はどうやって古川を狙うのか?狙いは本当に古川なのか?宇佐美は疑念にかられる。


ダナエ
文藝春秋
藤原 伊織


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