お奨めミステリー小説 (273) 『QED 龍馬暗殺』 高田祟史

‘QED シリーズ’は薬学部の同窓生である男女の素人探偵コンビがトリッキーな事件を解決してシリーズ。TVドラマ化された漫画の『QED』とは関係がない。

作者はメフィスト賞受賞以来、歴史的事件と現実(あくまで作中)の事件を絡めるのを常としている。本作では龍馬暗殺が歴史的モチーフとなる。坂本龍馬の暗殺に謎なんかあったっけ?あれは新撰組の仕業では?というのは私を含め素人の浅はかさで、結構分からないことだらけらしい。

そこで、龍馬とはどんな人物だったのか?という考察が必要になるのだが、作者は膨大な文献から得た知識を披露してくれる。これが半端な量ではなく、前半の100ページは坂本龍馬に関する蘊蓄がメインといって良い。

その一方で殺人事件も発生するが、これも龍馬暗殺に少し関わっている。過去に虐殺があった高知県山間部の村で起こる連続怪死ということで、ちょっとした“八墓村パターン”といえるだろう。その謎解きは少し腰砕け気味だが、作者なりに龍馬暗殺犯(と首謀者)を特定してみせる。こうした歴史物では結論をぼかすなあなあパターンが多いが、読んでいて感じるのは薬剤師でもある作者の生真面目さだ。

四国に行ったことがない私にとって、舞台となる高知県というのは神秘的な土地だ。山岳地帯の割合では日本有数だが、広い海岸線は外洋に向いて諸外国に繋がっている。平家の落人集落という閉鎖社会がある一方で龍馬のようなコスモポリタン的人物も生んだ。

意外にも龍馬という人物は明治後半まで一般大衆には知られていなかったという。明治政府の富国強兵政策の中で、その存在(藩の利害を超えた挙国一致的な思想)が時の政府に有用だったというのだ。思うに龍馬のような開明的な人物はどこの国にもいたのではないか?例えばロシア革命初期に搾取される農奴を救わんと立ち上がり、革命政府樹立後には真っ先に粛正されてしまったような若者たち。本作はそうした龍馬的人物たちへのオマージュのようにも読める。
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[あらすじ]

東京の病院に勤める薬剤師、奈々は学会で高知県に赴く。そこで大学の同窓生、美鳥に再会し山間部にある彼女の実家に招待される。なんとそこで待っていたのは一緒にいると必ず事件に巻き込まれる崇(通称タタル)だった。高知県、かつての土佐藩は龍馬の出身地ということで、龍馬の話題に花が咲く。中でも京都における龍馬暗殺の犯人は誰だったのか?

台風の接近で大雨が降り土砂崩れが起きた。奈々たち一行と折しも都会から村に戻っていた若者、竜郎は村に閉じ込められてしまう(お約束)。携帯も圏外で不安がつのる中、身体にナイフを突き立てられた竜郎の死体が発見される。それからも不審な死が連続して起こる。

この村には古くからの因習があって、崇によると平家の落人集落であることに起因するものだという。さらに驚くべき事実が村の長老からもたらされる。この村には龍馬暗殺者の正体が分かる書状があるというのだ。タタルらが神社を訪ねるとその書状が消え去っていた。

今回の連続死と龍馬暗殺には関係があるのか?


QED 龍馬暗殺 (講談社ノベルス)
講談社
高田 崇史

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