お奨めミステリー小説 (277) 『ミスティック・リバー』 D.ルヘイン

クリント・イーストウッド監督の同名映画の原作であり、現代アメリカを代表する作家の最高傑作だ。

映画版ではジミー:ショーン・ペン、デイブ:ティム・ロビンス、ショーン:ケヴィン・ベーコンの三人に加え、ホワイティがローレンス・フィッシュバーン、殺される娘ケイティがエイミー・ロッサムと豪華かつ適切な配役で、有名作品の映画化の希有な成功例といえる。

ただし、原作の方が強く引きつける力を持っている。

小説中では丁寧に手がかりも与えられているので、“本格”に名に値する犯人当て小説でもある。

内容は『ミリオンダラー・ベイビー』にも通じるいかにもイーストウッドの好みそうなもので、読者がこうなっては欲しくないという方向へ進んでいく。誰も幸福になれない結末には暗澹たる気持ちになる。

描かれるアメリカ庶民の生活も貧困と偏見と差別に満ちた汚い世界だ。こんな描かれ方をしたらアメリカに憧れる人間などいないだろうが、これがイーストウッドがたびたび描いてきた‘アメリカン・ドリームの正体’なのだ。

およそ夢も希望もない小説だが、ラストシーンでわずかな救いが訪れる。
それまでになかった静謐さと美しさがあり、フォークナーのような“文学の力”を感じさせる。

これはミステリーを越えたミステリーかもしれない。
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[あらすじ]

両親が友人同士のジミーとショーン、それに近所のデイブはボストン近郊の労働者地区で育った友人だった。1975年、三人が11歳の時、警官を装った男たちにデイブだけ誘拐され4日後に逃げ出して戻ってくる。明らかに性的暴行を受けたデイブを皆はなんとなく避けるようになる。「なぜデイブだけが誘拐されたのか?」と自分を責めるジミーやショーンとも疎遠になっていき、デイブは密かに心に闇を背負う。

25年後、一旦は犯罪者に身を落としたジミーだが、今は足を洗って雑貨店を営んでいた。妻と美しい娘たちに恵まれ平凡な毎日を過ごしている。しかしジミーの最愛の娘ケィティが惨殺体となって発見される。犯人は銃で撃ってケィティに怪我をさせ執拗に追い回してから殴った末、撃ち殺したのだ。この事件の担当は殺人課の刑事となっていたショーンだ。これを機会にジミーとショーン、デイブは再び交わるようになる。

今やすっかり更正したジミーだが娘の殺害を機に変わっていく。ショーンは捜査の邪魔になるとジミーを牽制するが、娘を殺された怒りに震えるジミーは昔の犯罪仲間の手を借りて犯人への復讐を考える。

やがて事件の当日にデイブが血まみれになって帰ってきたという事実が浮かび上がる。デイヴの妻であるセレステは夫が犯人ではないかという不安を隠しきれず、ジミーに心中を告白する。ジミーに呼び出されたデイブは同じ日、血まみれになったのは、少年に性的暴行を加えていた男を殴り殺したからであると主張する。

デイブは真実を言っているのか?

錯乱するジミーは聞く耳を持たず強引にデイブに娘の殺害を自供させようとする。


ミスティック・リバー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
早川書房
デニス ルヘイン


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