お奨めミステリー小説 (278) 『不思議な少年 第44号』 M.トウェイン

『トムソーヤの冒険』や『王子と乞食』の作者であるマーク・トウェインは実のところどのような人物だったのか?偽名で “ジャンヌ・ダルクの伝記” を書いた ことからも分かるように、ユーモアを持った児童文学者というステロタイプなレッテルを本人が嫌っていたのは間違いないようだ。

そして本書はその異彩ぶりが際だつもので、成立過程からして変わっている。トウェインの死後に発見された原稿が元になっているが、他の作者による捏造疑惑もあって、刊行されたのは作者の死後70年以上経過した1982年なのだ。出版に貢献したのは捏造された部分を突き止めたカリフォルニア大学の研究者だという。

作者は冒頭に昔むかしのお話を聞き書きしたと書く。確かに冒頭こそ中世の面影が濃い素朴なヨーロッパの片田舎の様子が描かれる。そこに謎めいた少年が登場して超自然的な力を発揮する。それでも純真そうな少年の振る舞いからは高貴な者の世を忍ぶ姿が感じられ、違和感はない。

ところが、後半のハチャメチャな乱れっぷりはすごい。
少年は神か天使か悪魔か?

宗教的でありながらホラー小説のようでいてタイムトリップやクローン人間を扱ったSF小説のようでもある。

ほとんど小説の体を為していないと言いたくなるほどで、希に見る奇書といっても良いだろう。
『紅楼夢』 や『魔の山』すらこれに比べれば、普通の本に思えてくる。

あえて雰囲気が似ている作品をあげるならマーガレット・アトウッドの2000年ブッカー賞受賞作品『昏(くら)き目の暗殺者』だろうか?

作者自身が生前封印したのも分かる気がする。

頭がグラグラする読書体験である。

そしてマーク・トウェインという人が怖くなる。
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[あらすじ]

1490年、オーストリアの古城にある印刷工場には様々な職人たちが働いていた。経営者は古城を買い取ったシュタイン一家だ。主人のシュタインは好人物だが、城にはバルタザールという魔法使いが居候してシュタインの妻と娘の心を支配している。

ある吹雪の夜、貧しい身なりの16-7歳の少年が印刷所を訪ねてくる。一夜を乞う少年は名前を聞かれると「第44号 ニューシリーズ 864962」と答える。驚いた一同は少年が刑務所あがりではないかと疑う。主人のシュタインは少年に興味を覚え、城に泊めて働かせることにする。

職人たちは44号に無理難題を押しつけるが、44号は不思議な方法で解決していく。やがて職人の一人である16歳のアウグストは44号が人の心を読めることに気づき、畏れながらも徐々に心を通わせる。

シュタインは44号に職人見習いになるよう提案するが、反発した職人たちはストライキを起こす。
プラハ大学から依頼された聖書の印刷が間に合わないと、印刷所は危機に陥るのだ。

しかし、44号は“職人たちの複製”を呼び出し聖書の仕事をこなす。
魔法使いバルタザールは44号に怖れをなし、村の神父と結んで44号を告発する。

アウグストら一部の抵抗にもかかわらず、44号は火刑台に送られてしまう。

やがて復活した44号がアウグストの前に現れ、様々な幻影を見せるのだった。


不思議な少年第44号
角川書店
マーク トウェイン


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