お奨めミステリー小説 (285) 『めぐり会い』 岸田るり子

岸田るり子といえば、不可能なシチュエーション)とその合理的解決、さらに京都の四季の風物だ。
本作でもそれらの特徴が遺憾なく発揮されている。

トリックはあっさりめで少したわいないが、そこに至るまでの人間関係、特に女性の目からみた女性の表現が秀逸だ。その中でも主人公の華美の母親と姑のねちねちした京都婦人ぶりはさながら妖怪のようだ。これだったら騒がしい大阪のおばちゃんの方がまだましだ。

陰鬱な家庭内暴力の描写にもかかわらず、この作品は珍しいほどの大団円を迎える。
凶悪な人間は出てこないおめでたい作品ともいえる。こうした陽性なところが作者の魅力かも知れない。

なお、作中で触れられる映画『バタフライ エフェクト』はなかなか小粋な作品だ。
日本ではあまり知られていない俳優ばかりだが、脚本が巧く、切ない結末は日本人好みだろう。
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[あらすじ]

華美は優秀な弁護士一家に生まれたが、父親や姉のような弁護士を目指すのを辞めて絵画に自分の世界を見つけようとした。しかし、それも所詮は素人の趣味の域を出ないレベルだった。やがて、医師の家に嫁いだ華美だが、夫には結婚前から10年間も付き合っている女がいて別れる気がないらしい。友梨というその女は華美より10歳も年上だが、自信たっぷりに愛人である夫のことを話し華美を挑発する。

家庭に居場所が無い華美が絵を描きに行った際、うっかり他人のデジカメと間違えて持って帰ってしまう。そこには日付から最近撮られたと思われる10代半ばの少年の写真があった。その少年の無邪気な美しさに惹かれた華美はデジカメの写真から少年の住む地域を予想し訪ねる。写真の少年には会えなかったが、代わりに奇妙な話を聞いた。その地区では不審火が多発しているのだ。華美はデジカメにあった少年の作品らしい詩‘炎に魅せられし者’との関連に畏怖を覚える。美しい少年は炎の魔力に取り憑かれて放火を繰り返しているのだろうか。

かつてヒットを飛ばしたロックバンドECTRのリーダー祐一は自堕落な生活を繰り返していた。祐一は京都の出身で家庭環境に嫌気がさし東京に出てきて10年になる。祐一はかつて自分を毛嫌いする暴力的な父親の目を盗み詩を書きためていたが、父親に燃やされてしまった。数少ない慰めは優しくしてくれたトモねえだった。彼女は父親とその前妻との間の子で、自分の理解者だった。ストーカーに刺されて重傷を負った祐一は過去を振り返り、10年ぶりにトモねえを訪ねてみる気になる。しかし、30代半ばで幸せな結婚をしていると想像していたトモねえは意外な姿をしていた。


めぐり会い
徳間書店
岸田 るり子


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