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zoom RSS お奨めミステリー小説 (294) 『ホロー荘の殺人』 A.クリスティ

<<   作成日時 : 2010/08/14 00:00   >>

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屋敷に集まった誰もが殺人を犯しそうでいて悪い人ではなさそう、というクリスティお得意のスタイル。
冒頭、ルーシーたちの会話から一癖ありげな登場人物たちが無理なく説明され、パーティ気分に浸れる。

まさにクリスティ節であるが、今回の分析はいつもの簡潔さとは違って、もはやミステリーにおける心理分析の一線を越えている。ヘンリエッタが夢見ながら彫刻に打ち込む場面など鳥肌が立つほどだ。彼女が彫刻の表情、特にその眼から“人間の内面に潜むもの”を見つけようと苦悩する姿はこの作品全体のテーマになっている。そればかりか、それは作家クリスティ自身の晩年の姿であったかもしれない。

この作品は「全ての殺人には理由がある」という作者の一貫した主張とは少し異なる。遺産目当て・復讐・過去を知る者や目撃者の抹殺といった古典的な殺害動機に比べると抽象的なのだ。したがって、「なぜここまで?」という疑問が起こらないわけではないが、前述の執拗なほどの人間観察が殺害動機の説得力を高めている。その結果、クリスティの作品の中ではかなりの大作となった。

今回のポアロは余裕を持って事件をさばき犯人に皮肉を浴びせる、という毎度のスタイルを放棄し、まるで傍観者のようだ。全てが終わってから謎を解くあたりは金田一スタイルともいえる。全能的な名探偵ポアロですら手の届かない世界を描いているともいえる。

そして、これは生涯にわたって人間の内面が引き起こす事件に書き続けた作家の集大成的作品であり、ミステリーの名を借りた心理学小説であろう。
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[あらすじ]

名門アンカテル家ではこの週末にホロー荘に親しい人を呼んでパーティを行う予定だ。当主アンカテル卿の妻でホステスのルーシーは大忙しだが招待客には様々な人々がいるので気がかりが多い。もっとも当のルーシーも最近は忘れっぽくなって使用人たちは気を使っているのだが。

大学を出たてで左翼思想にかぶれたデイヴィッドは偏屈で人と交わるのが苦手だ。エリート医師のジョンとガーダのクリストウ夫妻にも問題がある。妻のガーダは頭が鈍く何をやっても他の人についていけない。そこで彫刻家で万事に如才のないヘンリエッタに彼女の面倒を見てもらおうということになる。ルーシーによれば、ヘンリエッタはエドワードが好きなのだがなかなか言い出せずにいる。それでいて当のヘンリエッタはジョンと不倫関係にあり、エドワードはヘンリエッタを非難する。

招待客の中にはエルキュール・ポアロもいた。
ルーシーは気晴らしに彼を呼んだというが、数々の難事件を解決した“卵形の顔をした探偵”に興味があるらしい。

ところがポアロがホロー荘に到着するとプールサイドには血まみれの男が横たわり、傍に銃を手にした女が虚ろな表情で立ち尽くしていた。「自分が探偵だからと、こんなベタな演劇で歓迎してくれるとは」そう考えたポアロがよく見ると、その男、医師のジョン・クリストウは本当に射殺されていた。そして銃を持っていたのは妻のガーダだった。

愚かだが夫に尽くしてきたガーダがその夫を射殺するはずがない、ポアロはそう考える。

それにしてもホロー荘の人々がまるで死人のような雰囲気を漂わせ、遺体のジョンだけがまるで生きているかのようなのがポアロには不思議だった。


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