お奨めミステリー小説 (295) 『6時間後に君は死ぬ』 高野和明

乱歩賞史上に残る傑作といわれる 『13階段』 の作者である高野は元々映画制作者志望で、多くの脚本を書いていたそうだ。連作短編であるこの作品集にはそうした作者の美点がよく現れている。

限られたページ数で簡潔に登場人物が描かれると、一気にゴールまで突っ走る。ときには調子が良すぎると思わせるところがあるが、内容に引き込まれてあまり気にならない。その手腕は短編名人の宮部みゆきを思わせる。

宮部みゆきともう一点共通するのが、予知能力という超能力を扱っている点だが、あくまで語り口として使っており、ストーリーの中心はどれも人間の生き方といえるだろう。

どの短編も魅力的で、好みは分かれるだろうが、特に印象的だったのは神秘的な雰囲気が漂う『ドールハウスのダンサー』だ。夢を捨て平凡を受け入れることで楽になっていく主人公にも幸福が予知されていた、というのは、派遣切りされて犯罪に走る若者へのメッセージのようにも読める。

もともと作者はこの作品をシリーズ最後にするつもりだったのではないだろうか。

しかし表題作の5年後を描いた(実際5年後に書かれた)続編『3時間後に僕は死ぬ』は、がらりと変わった雰囲気。
短時間の出来事が異様な緊迫感をもって描かれる。

脚本家の作品らしく、各作品に一回は名台詞が登場するのも特徴だが、単行本化された際に追加されたエピローグがまた泣かせる。ヒューマンドラマとしてもミステリーとしても、はては映画・ドラマの原作としてもいけそうな粒ぞろいの作品群だ。
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[あらすじ]

『6時間後に君は死ぬ』
25歳の誕生日を明日に控えた原田美緒は渋谷で見知らぬ若者に呼び止められた。江戸川圭史という青年は「自分には未来が見える」と言い、美緒は今日の夜中12時に胸を刺されて死ぬと言い切る。圭史を薄気味悪く感じる美緒だが、最近ストーカーにつけられている気がしていたので不安になる。美緒から相談を受けた刑事は最近若い娘を狙った連続殺人の直前に予言者のような男が出没していたことを知る。

『時の魔法使い』
脚本家志望の朝岡未来はテレビ局の下働きで食いつないでいる。久しぶりに子供時代を過ごした街を訪れた未来は、自分そっくりの少女を見つける。驚いたことに、それは20年前からタイムスリップしてきた未来自身だった。

『恋をしてはいけない日』
どんな男と付き合ってもすぐに飽きてしまう女子大生の未亜は、またも新しい恋を捜している。ある日、未亜は圭史という男に「次の水曜日には恋してはいけない」と忠告される。しかし水曜日に交通事故に遭遇した未亜を救ってくれた真吾という学生に強く惹かれた未亜はその忠告を無視する。やがて真吾の奇妙な一面を知って未亜は気味悪くなってくる。

『ドールハウスのダンサー』
ダンサーを夢見てレッスンとオーディションに明け暮れる美帆だが、ようやくテーマパークダンサーの最終テストに臨もうとしている。しかし最近の美帆は未来を予見するかのような奇妙な感覚に襲われている。予知の通りに高校時代の友人と出会い、今またオーディションに落ちる感覚に襲われた美帆は怯えはじめる。

『3時間後に僕は死ぬ』
ストーカーに狙われた事件から5年後、美緒はセレモニー会場のスタッフとして充実した日々を送っていた。そこへ招待客の一人として圭史がやってくる。再会を喜ぶ二人だが、圭史は不意に自分の未来が見えると言い出す。3時間後にこの式場が爆発して炎に包まれた自分と多くの人が死ぬというのだ。おりしも、別の会場では有名教授の退官記念パーティが開かれていた。教授には敵がおり脅迫も受けていたため、誰かが爆弾を投げ込むのではないか。美緒は「未来は変えられない」という圭史を励まし犯人捜しを始める。


6時間後に君は死ぬ (講談社文庫)
講談社
高野 和明


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