お奨めミステリー小説 (298) 『夢で死んだ少女』 D.ディアス

作者デクスター・ディアスは、刑事事件を専門にするイギリスの弁護士だ。数々の裁判ではほとんど貧困者の側に立って弁護を行ってきたという。本作はデビュー作だが、ルース・レンデルのアドバイスのもと、充分な準備を持って書かれた。力作でありながら肩の力が抜けており、巨匠の風格すらある。

裁判シーンのやりとりは専門家だけあって丁々発止なのは当然としても、吹き出すようなユーモアも満載だ。なぜか裁判中に訴追側の弁護士と弁護側の弁護士が並んで座り、こそこそ話したり、一緒に酒を飲んだりと、一見ありえないようなシーンも多い。しかしこれにはイギリスの裁判事情が反映しており、決してフィクションではないのだ。

イギリス(イングランド)には検察制度がなく、刑事裁判では訴追側弁護士が日本でいう検察官の役目を果たす。法廷弁護士は訴追側に立つこともあれば被告を弁護することもあるのだ。こうして警察という国家の官僚組織を牽制し、裁判自体が官僚的になり過ぎないようにしている。馴れ合い的になる怖れもある反面、法治国家として成熟を感じさせる。

本作の原題を『FALSE WITNESS』といい、徹底して証人とその証言にこだわる作品だ。
一方で巨石文化を巡って幻想的なシーンも多く、オカルト殺人を思わせる容疑者の心理分析など盛りだくさんだ。

実に退屈させない小説である。
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[あらすじ]

イングランドの片田舎、ストーンベリーの環状列石(ストーンヘンジ)で少女の遺体が発見された。モリーという16歳の少女が全身43カ所をナイフで刺されて放置されたのだ。遺体のそばにいたのは、キングズリーという車いすに乗った男だった。キングズリーはポルノ小説作家という怪しげな男で、いくつかの性犯罪で起訴されていた。

キングズリーの弁護を引き受けたのはトーマスだが、以前ストーンベリーに関わる裁判で負けて最近は落ち目だ。しかもかつての盟友で恋人だったジャスティンはキングズリーを訴追する側に回っている。陪審員もキングズリーに対する目は厳しく、とても勝ち目はなかった。おまけにキングズリーは謎めいた言葉を吐いて弁護側の手を焼かせる。

取り調べでは素直に罪を認めている様子だったキングズリーは裁判に入ると、突然アリバイを主張してきた。自分はテンプルマンという男と一緒にいたというのだ。トーマスと相棒の弁護士エマはテンプルマンを捜し回るが、そんな男は一向に見あたらない。

やがて弁護側のトーマスたちに圧力がかかってきた。車内に麻薬が置かれ危うく逮捕されかかったり、調査に行ったストーンベリーで襲撃されたりする。混乱のうちに裁判は進むが、なんと裁判を担当する判事が変死してしまう。

キングズリーは本当に少女を殺したのか?

トーマスとエマは危険を冒して走り回る。


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