シュロモ・ミンツよ、どこへ行く?

シュロモ・ミンツ (Shlomo Mintz) は、1980年ごろ彗星のように現れた ヴァイオリニストだ。

世界中に 熱烈なファン が多くおり、2009年の来日時には熱狂ぶりが伝わってくる。

ミンツはパガニーニの演奏で一世を風靡したが、私があまり興味ない領域で聴く機会がなかった。

そんなミンツが演奏するCDを最近まとめて聴いているのだがこれがすごい。

一聴してあまりの巧さに唖然とする。

どの曲を聴いても滑らかで美しく、かつ自在に歌う余裕がある。


パガニーニ:24のカプリース
ユニバーサル ミュージック
2014-06-11
ミンツ(シュロモ)

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レコーディングのマジックというわけではない。

難曲パガニーニを余裕で弾ききる動画が出ている。




「巧いヴァイオリニストは多くいるが、凄いヴァイオリニストはミンツだけ」 と言った人がいるという。

その後、技術的にこの域に達したのは ヒラリー・ハーン ぐらいではなかろうか。

超絶技巧を感じさせないだけ、ミンツの方が凄いのかも知れない。

しかし1990年代に入ると、ミンツは当時30代前半にも関わらずメジャーレーベルとの契約を打ち切った。

まもなく録音活動は休止し、現在までその状態が続いている。

他の奏者のように「名曲シリーズ」を弾かされることに嫌気がさしたのか?

それとも、音楽業界の「芸術で金儲け」に疑問を呈したのか?

スターンを頂点としたユダヤファミリーや小澤率いる桐朋学園グループが、芸術と商売を両立させたのと対照的だ。

いずれにしろ、ミンツはメジャーレーベルから名曲リリースという「王道」から外れたのである。

最近、ヒラリーにもその傾向が見えており、オリジナル曲を依頼し録音もした。


In 27 Pieces-Hilary Hahn Encores
Deutsche Grammophon
2013-11-11
Hilary Hahn

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庄司紗耶香 もマイナーレーベルから独特な選曲でリリースしている。

いずれも、ミンツが録音しなくなった当時と同じ年代で注目している。

ミンツに年代が近い Cho-Liang Lin はかつてのヴィルトゥオーソ的演奏を控え教育者として実績を残している。


もちろんミンツは引退したわけではなく、後進の育成に力を入れ、ときにはライブ演奏し尊敬を集めている。

だからといって、そうした演奏が「熱狂のライブ」としてCD化され取り上げられることもない。

世界一のヴァイオリニストが CD を出さないというこの事実。

ミンツの存在は音楽ビジネスとは何かを考えさせてくれる機会となる。

このまま「復帰」などせず、世界中から敬意を集め続けて欲しいと思う。


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