テーマ:ミステリー小説

お奨めミステリー小説 (300) 『ブラウン神父のお伽噺』 G.K.チェスタトン

300回の記念にして最後に紹介するこの小品はブラウン神父が解き明かすとびきりの不可能犯罪を描く。 シチュエーションは実に魅力的で、歴史ものでありながら、神秘的であり、ホラーの要素もある。 短い小説によくぞここまで詰め込んだものだ。 ミステリーの無限性を予感するこの作品が発表されたのは第一次大戦中の1914年であった。 …
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お奨めミステリー小説 (299) 『盤上の敵』 北村薫

日常のほのぼのとした情景をミステリーに仕立てる北村薫の異色作ながら代表作。 全編に仕掛けられたトリックが炸裂する本格作品でもある。 この作品において、不条理で凶暴な力に曝される登場人物を描いたため、以前からの読者は驚き、「傷つけられ、裏切られた」という苦情も届いたという。そのため文庫版出版の際に異例な“作者からのお断り”が添えら…
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お奨めミステリー小説 (298) 『夢で死んだ少女』 D.ディアス

作者デクスター・ディアスは、刑事事件を専門にするイギリスの弁護士だ。数々の裁判ではほとんど貧困者の側に立って弁護を行ってきたという。本作はデビュー作だが、ルース・レンデルのアドバイスのもと、充分な準備を持って書かれた。力作でありながら肩の力が抜けており、巨匠の風格すらある。 裁判シーンのやりとりは専門家だけあって丁々発止なのは当然…
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お奨めミステリー小説 (297) 『東京ダモイ』 鏑木蓮

第52回江戸川乱歩賞受賞作だ。作者は40代半ばでの本格デビューとあって、貫禄すら感じさせる。 取り上げた題材も“シベリア抑留者の証言”という渋いものだ。 巻末には例によって審査員たちの意地悪い評が並ぶが、盛りを過ぎた有名作家には書けない新鮮さがある。 謎解きのテンポが速くはないものの、堂々たる作品といえるだろう。 シベリ…
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お奨めミステリー小説 (296) 『蒼火』 北重人

人を斬った者は蒼い火を背負っているという。そしてその蒼い火を見ることができるのもやはり人を斬った人間だけである。こうした幻想的な設定のもと、対照的な二人の剣客を描く時代劇。 時代物といえば池波正太郎ぐらいしか読まない私だが、本作には感銘を受けた。 浪人、周ノ介を主人公とするシリーズもののようだが、予定調和的な終わり方はせず、…
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お奨めミステリー小説 (295) 『6時間後に君は死ぬ』 高野和明

乱歩賞史上に残る傑作といわれる 『13階段』 の作者である高野は元々映画制作者志望で、多くの脚本を書いていたそうだ。連作短編であるこの作品集にはそうした作者の美点がよく現れている。 限られたページ数で簡潔に登場人物が描かれると、一気にゴールまで突っ走る。ときには調子が良すぎると思わせるところがあるが、内容に引き込まれてあまり気にな…
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お奨めミステリー小説 (294) 『ホロー荘の殺人』 A.クリスティ

屋敷に集まった誰もが殺人を犯しそうでいて悪い人ではなさそう、というクリスティお得意のスタイル。 冒頭、ルーシーたちの会話から一癖ありげな登場人物たちが無理なく説明され、パーティ気分に浸れる。 まさにクリスティ節であるが、今回の分析はいつもの簡潔さとは違って、もはやミステリーにおける心理分析の一線を越えている。ヘンリエッタが夢見な…
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お奨めミステリー小説 (293) 『インディアン・キラー』 S.アレクシー

タイトルを直訳すると“インド人殺し”だが、ここでいうインディアンとはアメリカインディアンのことだ。 しかも表題から想像されるのと真逆、“キラー・インディアン”の話なのだ。 アメリカ先住民を“インディアン”とは差別的で“ネイティブ・アメリカン”と呼ぶべきではないのか?というのが今日一般的だが、アメリカ先住民である著者は違う意見を持…
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お奨めミステリー小説 (292) 『石の猿』 J.ディーヴァー

叙述トリックの名手ディーヴァーは本作でも健在だが、異色なのは切れ者リンカーン・ライムの精神世界が東洋人との接触を通して作中で変わっていくことだろう。“野蛮さ”80%、“東洋の神秘”20%というアメリカ人から見た中国、そして東西の出会いが描かれる。 本作の主人公はライムやアメリアでなく、殺し屋ゴーストと中国人刑事ソニーの二人ではない…
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お奨めミステリー小説 (291) 『ハルモニア』 篠田節子

本人がどう思っていようが、これは篠田節子の代表作である。 限られた登場人物で長い物語を持たせる筆力は相当なものだ。 しかも、その多くがチェロのレッスンシーンなのだ。 本作は芸術論や倫理学、音楽の商業主義など様々な問題を包含する。 特に主人公である東野が直面する「凡人として長く生きるか? それとも天才として生命を燃え尽きる…
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お奨めミステリー小説 (290) 『哲学者の密室』 笠井潔

笠井潔を語る上で本作を避けては通れない。 強固な密室殺人を描きながら密室そのものを哲学的に論じた代表作である。 そして20世紀ミステリー史上の金字塔の一つともいわれる。 本作は夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』などに並ぶ大作だが、物語の構造、過去の部分は独立しても読める点などはドイルの『恐怖の谷』を思わせ…
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お奨めミステリー小説 (289) 『リセット』 北村薫

タイトルからどんな内容か分かりそうなものだが、それはどうでも良い。とにかく、作者の見事な文書術に酔いたい。 前半の舞台は神戸近辺、ハイソサエティの女子学生のたわいない話のようだが、時代背景が戦前から戦中とあって、暢気な中にも緊張感がある。ちなみに主人公が通うのは、関西のお嬢様学校として現在も残る甲南女子高校、主人公の父親が勤めてい…
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お奨めミステリー小説 (288) 『お蝶ごろし』 多島斗志之

この短編小説は歴史的事実に基づいて書かれている。しかし第三者が細部までは知り得ない内容まで、ドキュメンタリータッチで描かれている。まさに“見てきたような嘘”であり、作者の力量が分かるだろう。 小説や時代劇でおなじみの‘清水の次郎長’は街道に巣くうヤクザであったわけだが、確かに周囲の信望は厚かったようだ。開明的な人物で明治維新後はい…
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お奨めミステリー小説 (287) 『フランドルの呪画』 A.P.レベルテ

少し珍しいスペインのミステリー作品だ。アメリカの現代ミステリーにお決まりの美男美女コンビやタフガイの刑事、反骨のジャーナリストなどは登場しない。代わりにゲイながら深い教養と精神世界を持つ古美術商セサル、勝負の結果にまったく興味を持たないチェスの最強マスター、ムニョスなどいかにも一癖あるヨーロッパ風キャラクターが活躍する。 そしても…
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お奨めミステリー小説 (286) 『幻影のペルセポネ』 黒田研二

同作者の 『カンニング少女』 はカンニングという行為に生きがいを見いだす若者の生き方を問う妙にさわやかな作品だった。本作ではネット上のヴァーチャル空間と現実の世界に平行して起こる殺人を描きながらも青春小説のテイストを失っていない。 主人公は人とうまくつき合えない若者だが、明晰な頭脳と正義感を持っている。ただ、それを現実ではうまく表…
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お奨めミステリー小説 (285) 『めぐり会い』 岸田るり子

岸田るり子といえば、不可能なシチュエーション)とその合理的解決、さらに京都の四季の風物だ。 本作でもそれらの特徴が遺憾なく発揮されている。 トリックはあっさりめで少したわいないが、そこに至るまでの人間関係、特に女性の目からみた女性の表現が秀逸だ。その中でも主人公の華美の母親と姑のねちねちした京都婦人ぶりはさながら妖怪のようだ。こ…
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お奨めミステリー小説 (284) 『悪魔はすぐそこに』 D.M.ディヴァイン

長らく“幻の作家”だったディヴァインだが、1990年代後半から日本語訳が出始めて「こんな作家がいたのか」と驚かせた。こうしたコピーははったりであることも多いが、ディヴァインに限ってはその通りだ。クリスティが絶賛したのも頷ける。 ディヴァインの特徴はパズル的な謎解きに加え、登場人物たちの生々しい描き方だ。本書における主人公は美男美女…
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お奨めミステリー小説 (283) 『絆』 小杉健治

作者の小杉は筋金入りの社会派ミステリー作家だ。ただし清張の描く政治や巨悪よりも、市民が巻き込まれるタイプの作品が多い。また早い時期から法廷ミステリーを書いていて、探偵役も原島をはじめとする弁護士が務める。 『絆』は小杉の代表作で、第41回日本推理作家協会賞長篇部門を受賞した。火曜サスペンス等で頻繁にTVドラマ化されており、原島弁護…
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お奨めミステリー小説 (282) 『ロシア幽霊軍艦事件』 島田荘司

作者は『奇想・天を動かす』で幻想的な味わいの大トリックと社会派小説を融合して見せた。本作は歴史ミステリーと大トリックが(ある程度の)必然性を持って結びつく点が特異だ。 『ロシア幽霊軍艦事件』とはよく考えるとすごいタイトルだ。なにせ、そのまんまなのだから。その種が明かされたときの「なーんだ」という反応も最大級だろう。なにせ“軍艦が×…
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お奨めミステリー小説 (281) 『動物園の密室』 霧舎巧

作者のペンネームの名付け親は名探偵、御手洗潔の産みの親、島田荘司だ。 そして当の島田からパロディ作品を依頼されて書いたのが本作だという。 冒頭のエピソードから始まって、御手洗の言葉で語られる官僚への嫌悪、横浜への偏愛、さらに御手洗の意外な子供受け、動物好き、騎士道精神などが織り込まれ、ある意味本家以上に御手洗ものらしい。 …
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お奨めミステリー小説 (280) 『母子像』 久生十蘭

プロの作家をも唸らせる久生十蘭の短編の中でも短い作品で、きわめて凝縮された内容だ。 世界短編小説コンクールで一位に輝いたそうだが、第二次大戦直後の焼け跡日本でしか生まれ得ない小説だろう。 『久生十蘭短篇選』は駄作の見あたらない希有の短編集だ。 哀切で幻想的な光景が目に浮かぶ『黄泉から』。 終幕がまったく見えない『予言』、…
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お奨めミステリー小説 (279) 『魔術師(イリュージョニスト)』 J.ディーヴァー

映画化された『ボーン・コレクター』で初登場した全身麻痺の元ニューヨーク市警科学捜査部長リンカーン・ライムと相棒の女性鑑識係アメリアのコンビ第5弾だ。 『ボーン・コレクター』が映画化された際は主役のデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーが実に様になっており、“映画化による駄作化”が生じない好例だった。その後、『コフィン・ダン…
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お奨めミステリー小説 (278) 『不思議な少年 第44号』 M.トウェイン

『トムソーヤの冒険』や『王子と乞食』の作者であるマーク・トウェインは実のところどのような人物だったのか?偽名で “ジャンヌ・ダルクの伝記” を書いた ことからも分かるように、ユーモアを持った児童文学者というステロタイプなレッテルを本人が嫌っていたのは間違いないようだ。 そして本書はその異彩ぶりが際だつもので、成立過程からして変わっ…
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お奨めミステリー小説 (277) 『ミスティック・リバー』 D.ルヘイン

クリント・イーストウッド監督の同名映画の原作であり、現代アメリカを代表する作家の最高傑作だ。 映画版ではジミー:ショーン・ペン、デイブ:ティム・ロビンス、ショーン:ケヴィン・ベーコンの三人に加え、ホワイティがローレンス・フィッシュバーン、殺される娘ケイティがエイミー・ロッサムと豪華かつ適切な配役で、有名作品の映画化の希有な成功例と…
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お奨めミステリー小説 (276) 『スロー・リバー』 ニコラ・グリフィス

1996年にネビュラ賞を受賞した本作は当然ながらSFに分類されている。 同時に良く書けたミステリーでもある。 誘拐された少女が誘拐犯の一人を殺して逃げ出すところから始まる。そしてアウトローな地下活動をする女性に助けられ自分を取り戻していく、ということで若者の“自分探し”のようだが、そんな甘い話ではない。階級格差と貧困、幼児虐待な…
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お奨めミステリー小説 (275) 『トーキョー・プリズン』 柳光司

密度の濃い本格小説を世に問う作者が戦後、焼け野原になった東京を舞台に描く一種の安楽椅子探偵もの。 肝心の探偵キジマが収監中の戦犯だからかなりの異色作といえるだろう。キジマはホームズとレクター博士と吉村昭の『破獄』で有名な脱獄囚のキャラクタを併せ持つ。ホームズ・ワトソンの例を引くまでもなく、異色探偵には常識人の相棒が必須だが、ここで…
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お奨めミステリー小説 (274) 『俘囚』 海野十三

一見してグロいホラーのようでもあり、乱歩の『芋虫』を思わせる悲喜劇でもある。 しかし後半は少し科学的な考察も入った一種の理系ミステリーになる。 とはいえ相当に強引で、思わず笑ってしまう。 かつて『ウルトラ Q』に『1/8 計画』というのがあったのを思い出した。 本人は真面目でも今読むとトンデモ科学に見えるミステリー作品が…
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お奨めミステリー小説 (273) 『QED 龍馬暗殺』 高田祟史

‘QED シリーズ’は薬学部の同窓生である男女の素人探偵コンビがトリッキーな事件を解決してシリーズ。TVドラマ化された漫画の『QED』とは関係がない。 作者はメフィスト賞受賞以来、歴史的事件と現実(あくまで作中)の事件を絡めるのを常としている。本作では龍馬暗殺が歴史的モチーフとなる。坂本龍馬の暗殺に謎なんかあったっけ?あれは新撰組…
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お奨めミステリー小説 (272) 『ダナエ』 藤原伊織

旅行代理店に勤めていたという作者の描く登場人物には業界人が多い。 ちゃらちゃらしているようで、どこか生真面目な人物が活躍する。 本作も例外ではない。嫌なやつばかり出てくると思ったら、実はそうでもなかった。 最後はほのぼのした人情もので“ちょっといい話”になっている。 ギリシャ神話の登場人物であるダナエはゼウスとの間にペル…
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お奨めミステリー小説 (271) 『ペトロス伯父とゴールドバッハの予想』 A.ドキアディス

あらゆる科学者の中で数学者は特異なポジションにいる。数学は最も純粋な学問とみられ、、早熟な天才が若いときに為した業績のみが後世に伝えられている。リーマン39歳、アーベル27歳、ガロアは20歳で没しながら、ζ(ゼータ)関数、アーベル積分、ガロア群といった偉大な功績は現在でもテキストとして扱われる。あらゆる学問分野を通じ、19世紀前半の書物…
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